• シェイク!Vol.11 マンガやアニメをつくる側の視点(1)<br>諏訪道彦(読売テレビ)×高山晃(ファンワークス代表取締役社長)×小沢高広(うめ) (漫画家)

シェイク!Vol.11 マンガやアニメをつくる側の視点(1)
諏訪道彦(読売テレビ)×高山晃(ファンワークス代表取締役社長)×小沢高広(うめ) (漫画家)

異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。
第11回は、「マンガやアニメをつくる側の視点」と題し、読売テレビから編成局アニメーション部 エグゼクティブ・プロデューサーの諏訪道彦さん。さらに漫画家小沢高広(うめ)さん、ファンワークスの高山晃さんの3名による鼎談を実施。トークセッション当日は、この3名でしか出来ないようなエピソードも飛び出すなど盛り上がりを見せた。今回はその模様を全5回でお届けする。

ネット発でヒットを作る

小沢

シェイク!Vol.11、これよりはじめます。よろしくお願いします。最初は自己紹介ということで、ぼくからやりましょうか。2人組漫画家うめのシナリオと演出担当の小沢と申します。2001年にちばてつや賞一般部門ちばてつや大賞を受賞してデビューしました。2010年に『青空ファインダーロック』という短編で、日本人初のAmazonKDPでのセルフパブリッシングをやりました。

代表作は、秋葉原にあるゲーム開発会社を舞台にした『大東京トイボックス』です。テレビドラマ化もされました。ゲーム業界の漫画って、実録ものはあったんですけれど、開発自体をテーマにしたものはそれまでなかったので、けっこう話題にしていただきましたね。マンガ大賞2012で惜しくも2位、文化庁メディア芸術祭2013年度の審査委員会推薦作品になったりもしました。

ほかにはAppleの創業者スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックを中心とした70年代シリコンバレーの物語『スティーブズ』も描いています。これは、原作者として、現役エンジニアの松永肇一さんが入って、3人の複数チーム体制で描いたものです。

6巻で昨年終了したあとに「『スティーブズ』全米殴り込み翻訳プロジェクト」をクラウドファンディングで立ち上げ、おかげさまであっという間に目標金額を達成。翻訳を進めているところです。現在は、コミックバンチwebで文学と手土産をテーマにした『おもたせしました。』、

cakes、ママテナで育児マンガ『ニブンノイクジ』を連載中です。

最近のお仕事だと、これですね。

永井豪先生デビュー50周年記念作品『劇場版 マジンガーZ」の脚本を担当しました。月刊ヤングマガジン連載の外伝「マジンガーZ インターバルピース」のシナリオも担当していますので、よかったら見てください。

高山

ファンワークスの高山です。よろしくお願いします。今日は、ちょっと、巨匠に挟まれて緊張しています。

諏訪

なにを言ってる(笑)。

高山

なのでパワポ作ってきちゃいました。

諏訪

すごいねえ。

高山

2005年にファンワークスという会社を作って12年になります。大学卒業後、広告会社に入り、その後、コンテンツ系の制作がやりたくなり、ドラマ制作会社オフィスクレッシェンドにいました。プロデューサーの秋元康さんが創業に関わり、監督の堤幸彦さんや大根仁さんが所属しているところです。そのあとアニメに興味を持ち、『ちびまる子ちゃん』や『世界名作劇場』を製作している日本アニメーションを経て、2005年にファンワークスを設立しました。幸い、最初に手掛けた『やわらか戦車』が大ヒットしまして。その後も良面白い、プロジェクトに恵まれ、今でもなんとか生き延びています。

アニメーションは今、ウェブを通して海外にもどんどん広がっていて、とても発信力のあるメディアです。最近すごく思うのが、アニメーションとはコミュニケーションのモデルだな、ということです。いかに最適なコミュニケーションモデルを作るかを日々考えています。短編アニメを中心に、今季はTBS『王様のブランチ』内放送の『アグレッシブ烈子』、TOKYO MX1放送の『兄に付ける薬はない!-快把我哥帯走-』、『アキンド星のリトル・ペソ』、テレビ東京『ジャパンカウントダウン』内のショートアニメの4本をやっています。ぜんぶ足して8分45秒しかないです(笑)。45秒アニメを1本、1分アニメを1本、3分半アニメを2本です。クリエイターさんのビジネス支援がやりたいので、少人数でチームを組んで育てていこうと思っています。

弊社が作っている作品は次の4パターンに分けられます。
1.ゲームとアニメとグッズ展開を同時にやるメディアミックスのなかのショートアニメ。
2.広告としてのアニメ。
3.地域プロモーション用のアニメ。これはインバウンド向けにクールジャパンをアピールするためのアニメです。
4.最近増加中なのは海外版権、とくに中国の作品のアニメ化です。さきほど話した『兄に付ける薬はない!』は、テンセントという世界最大規模のIT企業が版権を持っている中国の作品なんですね。日本でもテレビ放送するし、中国でも動画配信プラットフォームで配信しています。

諏訪

読売テレビの諏訪ともうします。1986年1月6日スタートの『ロボタン』からもう32年、アニメのプロデュースをしています。こういうジェラルミンケースにですね、漫画家先生に絵を描いていただいて、日々それを持っていました。歩く広告塔ですね。これは、裏が犬夜叉になってます

(場内ざわめき)

小沢

すごい!

高山

わあー。

諏訪

高橋留美子先生に描いていただきました。ですが、これを持って歩くのは防犯上いろいろと危険だと言われて(笑)。最近は持っていません。プロデュース作品は、1987年4月から放送された『シティーハンター』や、ほかには『YAWARA!』、『コボちゃん』、『金田一少年の事件簿』などです。それから『名探偵コナン』を始めていま22年目ですね。テレビ局のなかで、これだけずっとアニメを作っている人間はほかにいないだろうと思います。

高山

そうですね。

諏訪

その自覚を持って、もう少し頑張っていきたいです。よろしくお願いします。

高山

『スティーブズ』は作品を発表するまでの経緯がおもしろいですよね。

小沢

もともとはiPhoneのアプリで作ろうとしてたんです。iBooksができる前、単行本1冊で1アプリっていう時期があって。なにかアプリを作ろうって話に仲間内でなって、ブックアプリならコストかからないんじゃない? じゃあiPhoneだからジョブズの話にしようよって。

高山

ど真ん中だ。

小沢

そう。ちょうどそのとき、『スティーブズ』の原作者松永さんが書いたすばらしい小説があったので。

高山

読みました!

小沢

あれを漫画化するのはうちしかないってよく言っていたので、やろうと。

高山

アプリの審査に出したらリジェクトされたエピソードがおもしろかったです。

小沢

そうなんですよ(笑)。向こうも判断に困ったらしく、たらい回しにされて。最終的にあまりにもリアルなAppleの物語だからAppleでは出せないと言われました。審査が進むにつれてどんどん上層部に行っているのはわかったので、どうせならジョブズに見てもらって「ファック」って言われてリジェクトされたかったです(笑)。(ジョブズがもう亡くなったので)それはもう叶わぬ夢になってしまいました。そんな経緯で『スティーブズ』はしばらくお蔵入りにしていたのですが、アメリカにはジョブズ漫画っていくつかあるんですよね。また新しくジョブズ漫画が始まるというネットニュースが日本で流れて、その作品の絵がちょっとがっかりジョブズだった(笑)。気弱そうなかんじでね。それで、日本なら誰に描いてもらいたいか、荒木飛呂彦がいい、浦沢直樹がいいってネット上で盛り上がってたんですね。いいタイミングだっていうので電子書籍作成・販売プラットフォームの「パブー」で公開しました。そしたらばんばん読まれて、一週間で25万PVになりました。それでクラウドファンディングで執筆料を集めることにしました。始めるきっかけも、執筆の資金集めもすべてネット発です。(自身の漫画家)デビューが講談社という大きい会社だったんですが、どうもネットのほうが相性いいですね(笑)

高山

作中でのジョブズの現実湾曲フィールドがいいですよね。

小沢

ジョブズはプレゼンテーションの天才で、目の前にいる人にカラスは白だと刷り込むことすらできるといわれている。Macintoch開発スタッフのひとりがそれを現実湾曲フィールドと名付けたんですね。元ネタはスタートレックらしいです。その冗談の言葉を、ぼくたちはほんとに超能力の働く空間として描きました。ジョブズが現実湾曲フィールドを使ってビル・ゲイツと戦うシーンもあります。

高山

すごいバトルシーンがね(笑)。

小沢

この発想は海外でもウケました。「見ろ、ジョブズがドラゴンボールの世界に行ったぞ」と言われていて、しめしめって思いましたね。

諏訪

途中に挟まれている松永さんのコラムがね、かっこいいタイトルだなあと思いましたね。「地平線の先まで見る目がありながら行く方法を知らない」。漫画を読んだあとに、コラムで時代背景の勉強もできてよかったです。

小沢

「地平線の先まで見る目がありながら行く方法を知らない」は、元Apple社員のエリオットがジョブズを評した言葉なんですよね。松永さんがいろんなところからかっこいい言葉をかき集めては紡いでくれて。ぼくたちはポエムって呼んでましたけど、かっこいい言葉による演出は、実は『シティーハンター』の影響なんで。

次回 『シティーハンター』と『名探偵コナン』の画期的演出術 へつづく

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