メッセージ | 2016年7月19日
鷲見さん メッセージ

IPGでは、TV番組情報収集システム、機械学習エンジン、スマホアプリ、Webサイトなどを開発・運用しています。

しかし、IPGの目的は、TV番組情報収集システムを開発することでも、機械学習のエンジンを開発することでも、スマホアプリやWebサイトを開発することでもありません。

IPGでは、スマホの番組表アプリ、番組表Webサイト、テレビ受信機についている番組表など、さまざまな形でテレビ番組表を提供しています。

しかし、IPGの目的は、テレビ番組表を提供することではありません。

そもそも、テレビ番組表を見る人の目的は、テレビ番組表を見ることではありません。ユーザの方の目的は、「見たい番組を見つけること」です。

別の言い方をすると、見たい番組さえ見つかるならテレビ番組表でなくてもいい、ということです。


単に「見たい番組」を表示すれば、それでいいのか?

「見たい番組」を見つけられると、その人の人生はより豊かなものになるのでしょうか?

例えば、番組情報を人々に教える人工知能があれば、その人の人生は本当に豊かになるのでしょうか。

Googleの人工知能を活用した囲碁プログラムであるAlphaGoが、人間のプロと対局した際、AlphaGoが序盤に打った手は失敗だと思いました。いままで、そのような手を序盤で打つという定石が無かったからです。しかし、ゲームが進むにつれ、その手が、試合の趨勢を左右する素晴らしい一手であったことに気付かされました。

同じことが「見たい番組」を教えてくれる人工知能にも言えるのではないでしょうか。

人間には「見たい番組」には見えないけれど、実際に視聴してみると、すごく面白い番組。

人間には「見たい番組」には見えないけれど、実際に視聴してみると、その人の人生をより豊かなものにしてくれる番組。

これは、どんなに考えても完全には答えの出ない問題です。

しかし、ここをろくに考えずに技術開発をやっても、本当に人々を幸せにする技術にはなりません。


機械は、ほんとうは「何」を学習すべきなのか?

例えば、ある人にコンテンツCを勧めると、つまらないと思って途中で見るのをやめてしまいました。しかし、その人がコンテンツAとコンテンツBを見た後にコンテンツCを見たら、最高に面白いと感じ、同じ分野のコンテンツに次々に手を出し、非常に楽しい時間を過ごしたとします。

この場合、人工知能エンジンは、このコンテンツを見る順序関係まで考慮したうえで、その人にコンテンツ情報を提示すべきでしょう。しかし、なぜ、こんな順序関係が存在するのでしょうか? この順序関係は、人間にとって、いかなる意味を持つのでしょうか?

コンテンツを視聴するという行為は、単なる消費ではありません。

人はコンテンツ視聴を通じて、学習し、成長し、現実を変え、人生をより豊かなものにしていきます。

例えば、ブラタモリを見た後、見慣れた町がより味わい深く感じられるようになりませんでしたか? 「へうげもの」を読んだ後、普段使っているお茶碗や湯のみの形が、味わい深く感じられるようになりませんでしたか? 食べ物の色味や香りがよりビビッドに感じられるようになりませんでしたか?

コンテンツ視聴は、現実の見え方を変えます。日々過ごしている時空間を変容させます。人生を変えていきます。

よって、IPGの考える人工知能は、人がどのような学習をするかを学習し、人がより良い学習をし、人生をより豊かなものにするための手助けになる必要があります。

視聴者の方の人生まで考えて設計された人工知能エンジンと、コンテンツ視聴を単なる消費だと考えて設計された場合の人工知能エンジンとでは、アーキテクチャがかなり異なってくるのだと、IPGでは考えているのです。


IPGの技術開発は、なぜ、どこへ向かっているのか?

あなたは、なんのために、どのようなテクノロジーを開発したいですか?

IPGの目的は、人々を幸せにすることです。
人々の人生を豊かにすることです。

人々を幸せにするような、人とコンテンツのマッチングをすること。そのために、IPGは存在します。

その目的を、とことん追求していった結果、「人を幸せにするのに、たいした技術は必要ない」という結論になったら、IPGはエンジニアチームを解散するしかありません。技術のための技術を開発しても意味がないからです。

しかし、現実は逆になっています。

人々を幸せにするための技術をとことん追求しようとすると、当初想像していたよりも遥かに高度な技術開発が、どうやっても避けては通れないことが、ますます明らかになってきています。

ここでは例として人工知能を引き合いに出しましたが、もちろんこれは人工知能に限った話じゃありません。

最高のユーザ体験を実現するスマホアプリやWebサイトなども、同じ話です。

本当に人々を幸せにするUI/UXを、もっとも根本的なところから考えぬいて、アプリを、システムを、インフラを開発すること。

それによって、人々を幸せにすること。

それがIPGが存在する理由です。

IPGの対象とする「コンテンツ」は、テレビ番組に限定されません。

ただ、日本人にとって、テレビはあらゆるメディアの中で、圧倒的に多くの可処分時間を獲得しています。

日本人の7割以上が、平日でも1日2時間以上テレビを見ています。55%は平日でも1日3時間以上見ています。

これに比べて、平均的な日本人は書籍やマンガを一日平均、何時間読むでしょうか? 人工知能エンジンに食わせる評価値行列の密度が、テレビとそれ以外のメディアでは、圧倒的に違うのです。

よって、人工知能エンジンが「ある人がどんなコンテンツ嗜好を持っているか?」を理解するためには、まず、その人のテレビ番組視聴行動や視聴関連行動のログデータを入手するのが一番近道です。

IPGは、テレビという圧倒的に巨大なメディアから始め、技術を育み、そこで得られた嗜好データを適用しやすいコンテンツ領域へと、「人とコンテンツのマッチング」の対象を広げていきたいと思っています。