G プレス | 2018年6月1日
Gプレス シェイク!Vol.16 記事(2)

シェイク!Vol.16 「境界線を越える仕事」
後藤繁雄(編集者、クリエイティブディレクター)
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草彅洋平(東京ピストル代表取締役社長)
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ターニャ (谷生俊美)(日本テレビ)

 この回のキーワードは、”モルモット”に”快楽主義”。後藤繁雄さんが語るその真意とは? 
そして他人と違うコンプレックスはどう克服するのか。短い言葉の中に凝縮された回。

自分を実験動物にして生きる

後藤
後藤 

編集者っていろんなタイプの人がいると思うんだけど、自分を実験動物にして生きるって考え方が好きなんです。自分はモルモットなんだよね。



ターニャ
ターニャ 

モルモットですか。



後藤
後藤 

モルモットですよ! モルモットの自分にいろんなことをやらせてみて、どういう経験するかをレポートして編集するっていうのがいちばん面白いと思っています。





ターニャ
ターニャ 

なるほど。



後藤
後藤 

人生は一回ですから!



草彅
草彅 

そうですね。



後藤
後藤 

ぼくは人間としてはレールから外れてるし、落ちこぼれだし、野良犬のようなもの。でも、仕事は資本主義のど真ん中でしてないと嫌なんです。よくはずれてる人いるでしょう。



ターニャ
ターニャ 

ああ、メジャーではなくアングラで活躍する、みたいな。



後藤
後藤 

そういうのは嫌いですね。



ターニャ
ターニャ 

商業主義のなかで成功をおさめて、かつエッジの効いたものがやりたいってことですよね。わかります。



後藤
後藤 

だからぼく、おととしまでは表参道ヒルズの4階に住んでいたんです。



草彅
草彅 

え、あそこに!?



ターニャ
ターニャ 

お金の匂いがしますね。



草彅
草彅 

うん。



ターニャ
ターニャ 

あそこって人住めるんだ……。



後藤
後藤 

今は東京と浜松と京都に家を買って。



草彅
草彅 

多拠点生活、おしゃれですよねー。



後藤
後藤 

そうやってうろうろしています。それも実験だよね。



ターニャ
ターニャ 

関西で変な人のことを総称して「へんこ」って言うんです。「谷生、へんこやん」って、中高のときけっこう言われてました。思春期ってね、そういう扱いをされると、傷つくじゃないですか。



後藤
後藤 

ぼくも子供のとき吃音だったから、ガールフレンドに電話するのは二十歳までできませんでした。



ターニャ
ターニャ 

でも、あるとき気づいたんです。変って言われるのはいいことだと。変は個性であり特長だから。ティム・バートン監督の映画『アリス・イン・ワンダーランド』のなかで、「私って変なの?」と聞くアリスに、アリスのお父さんは「優れた人はみな少し変なんだよ」と返すんです。お話を伺うかぎり、たぶん後藤さんも変だと思うんですけど。



後藤
後藤 

うん、変だと思いますね。寂しいと思ったことがあんまりないですね。植物とか動物とか石とか、人間じゃないたくさんの友達がいるから。


ターニャ
ターニャ 

なるほど。それはわからない(笑)。



後藤
後藤 
でもそう思わないですか? でないと寂しいじゃないよ(ターニャさんに近づく)。


草彅
草彅 

その近づき方が寂しがりやみたい。


後藤
後藤 

ぼくは変な人が好きなんです。ラブリーな人が多いでしょう。





ターニャ
ターニャ 

人にどう見られるかは関係ない。自分の幸せの最大化が人生の目的です。そう決めてから迷わなくなりました。



後藤
後藤 

うんうん。あと、快楽主義であることも重要だと思います。ぼくより上の世代の編集者って、団塊の世代だからヒロイックな方が多いです。根性とか英雄とかイデオロギーが好き。ぼくはそういうマッチョなのが嫌いで、快楽主義が好き。快楽主義で行こうと思っています。


草彅
草彅 

行きたいっすねー。


ターニャ
ターニャ 

行きましょう。でも日本ってやっぱり同質化圧力が強い。人と同じであることを求められがちです。それはちょっと不自由でもありますよね。



後藤
後藤 

自分の頭で考えていることよりも、世界のほうが、どう考えても大きいわけですよね。自分なんて知れてるわけだから。ぼくは20代で講談社の『art japanesque』を編集して、フリーになってからは人類学者の中沢新一と本を作ったり、YMOがちょうど解散したから、細野晴臣の本を編集したり。運がよくて、いろいろな仕事ができたけど、それでも不満がありました。それで、自分の輪郭を広げようと思って、世界中に調査に行く広報の仕事を作って、ホンマタカシや大森克己のような、今でこそ有名になった写真家といっしょに撮影をしに行って、写真集も作ったんです。



ターニャ
ターニャ 

へえー。



後藤
後藤 

そのときは、ふつうの雑誌だったら行かせてくれないような、アルメニアやアフガニスタンも行けました。そうすると、自分のイメージVS世界だからさ、面白いわけです。そうやってどんどん実験すればいいんだと思いますね。


シェイク!Vol.16 「境界線を越える仕事」